梅ログ

オレにさわるとあったかいぜ

即興劇のワークショップに参加した話(1)

「考えてることが分かりづらいから距離を感じるというか、感情表現を分かりやすくすればいいんじゃないかな」

人付き合いで悩んでいることを相談している中で友人は言った。
やや言いづらそうに見えた気がしたが滅茶苦茶分かる。反論の余地無し。
twitterで最近よく見る言い回しで言うと分かりみしかない。私のリアクションは基本的に控えめである。

 

人からプレゼントをもらった時のリアクションで例を挙げると、
「えっ、いいんですか?頂いてしまっても…ありがとうございます」
大体こう。そしてそう言ったあとにその頂いたものについて、ありきたりな感想や質問を述べる。かわいいですね、どこで見つけたんですか?

プレゼントは本当に嬉しい。しかし、その感情を言葉に乗せるのが苦手だ。
なんならこの言葉も、何かをもらった時に言うフレーズとして言っているところがある。どんな風にすれば良いのか分からないから。
こうなってしまった根本の原因は分かっているがそれについては今更どうしようもないことだ。
でも現状を変えたい気持ちはある。

 

実は数年前に、今回の友人の意見と似たことを別の人にも言われていた。
その時はその時でコミュニケーション能力を上げる為に頻繁に合コンやパーティーに身投げするなどしていた。
異性交遊的な成果は得られなかったが、まあまあ鍛えられたつもりでいた。
しかしそれでは補えなかった部分があるのだ。
それでは、それをどこで身につけるか。
同席していた別の友人は言った。

「演劇を学ぶのはどうですか」
演劇経験者である彼曰く、演劇スキルが身につくと日常での感情表現の幅も自然と広がるらしい。


よしやろう。
演技なんてできる気はしないが、友人がそう言うのならやろう。


彼に誘われて次の週末の夜早速演劇の学校に入り込んだ。
そこでは誰でも参加できる即興劇のワークショップが行われていたのだ。

演劇なんて義務教育時以来だが、初心者も参加可能の優しい会で安心。
とはいえ人見知りなので他の友人も誘ったが。


予めハイボールを一杯入れ、「初めてなのでめちゃくちゃ緊張しています!」と保身をしつつ簡単に自己紹介をして、2時間の即興劇体験が始まった。

感想を言うと、演技らしい演技を挟む余裕はなかった。緊張してる暇もない。必死。でも誰も怒ったり否定したりしないので上手くできなくても楽しい。

 

この教室ではひとつにつき10-15分程度のミニゲームを通して、性別も年齢もバラバラな他の参加者と様々なアクションのやりとりを行う。

決められた言葉を交互に投げかけていくゲームから始まり、
徐々に想像力、アドリブ力が必要なものへと少しずつ難易度が上がっていく。
(つい面白い事を言おうと考えてしまうが突飛なものを求められている訳ではないのでなんでもいい)
そして終わりの頃には複数人で決められたテーマで即興劇を行う。
観客はいないので仲間内での雑談中に全員で小芝居をする感じだ。

 

どのゲームでも、とにかくやらねばという気持ちだけで動いていたが、驚いたのは『全員小学校の仲間。同窓会での数十年ぶりの再会』がテーマの時。
日頃、標準語でのタメ口が使えない、東京では方言は出せない、と常に敬語で話していた。
ところが設定のおかげとはいえ故郷で使っている方言タメ口がヌッと出たのだ。びっくりした。
先生役の方には敬語、同級生には方言タメ口の使い分けもできていた。本当にびっくりした。
これについては既に日常に影響が出ているのも驚きである。
標準語に囲まれた環境での訛りにはまだ抵抗があるが、口調の切り替えに対する心理的なブレーキは和らいだように感じている。

 

普段話す速度も頭の回転も遅いため他の事を考えている暇もなく
家を出る5分前に起床した時のような慌ただしい瞬間のような、頭がフル稼働している状態を2時間続けている感覚だった。
終わりの時間を迎えるとほっとしたやら名残惜しいやら、少し清々しい気分だった。

一緒に初参加した、普段楽しく陽気な友人が「いつもならもっと面白い事言えるのに」と落ち込んでいたのも印象的だった。いつもできていることができなくなるというのはどういうことなのだろう。

 

リアクションをする前に考えてしまう癖、意見や感じたことを飲み込む癖をここで改善することができたらとこのワークショップに通う事を決めた。
コミュニケーションの度に起こる、胸の奥に何かが詰まるような感覚を払拭できたら万々歳である。

 

演技力は営業系の仕事にも有効とのことなので仕事でのコミュニケーションに悩んでいる人にもオススメ、かもしれない。
今後もこのブログで記録を行っていきたい。